黒人霊歌とは?ゴスペルとは何か?

最近、日本でも映画「天使にラブソングを」の影響もありゴスペルがブームになっていますが、黒人霊歌とゴスペルの違い、またゴスペルとは何なのか?といったことはあまり知られていないようです。
 
 ゴスペルとはキリスト教プロテスタントの宗教音楽で、英語では“Godspel”
と綴り、「福音」という意味です。正しくは“Godspel Music”(=福音を歌った歌)と呼びます。

 現在ゴスペルミュージックと呼ばれている数々の歌にその呼び名がつけられたのは二十世紀に入ってからのことで、それまで統一された名称はありませんでした。

 日本ではゴスペルというと大概の人は黒人教会でクワイヤが歌っているゴスペルを思い浮かべるようですが、それらは正確には“Black Godspel Music”(ブラックゴスペル)と呼ばれます。ブラックゴスペルの中にも、ソロやカルテット
(4人編成)、クインテット(5人編成)、クワイヤ(合唱隊)といった様々なグループ編成やアカペラからエレキ編成のバンドをバックに歌うものまで様々なスタイルがあるのです。仲田修子はマヘリア・ジャクソンのようにソロでゴスペルを歌います。
 “Black Godspel Music”(ブラックゴスペル)に対して白人が歌うゴスペルを“White Godspel Music”(ホワイトゴスペル)といいます。現在では、ただゴスペルといえばブラックゴスペルを指し、ホワイトゴスペルをコンテンポラリークリスチャンミュージックと呼ぶようになっています。

 それでは黒人霊歌とゴスペルはどう違うのでしょうか?黒人霊歌はアメリカで黒人が始めて創造した音楽である、と言われています。その全てがトラディショナル=古典です。作者は分からず代々歌い継がれてきた歌で、民謡のようなものだと考えれば良いと思います。内容は旧約聖書を題材にしたものがほとんどですが、“Motherless Child”のように聖書とは関係のない孤独や不安感を歌ったものもあります。

 歌詞の内容から大別すれば、黒人霊歌は旧約聖書を題材にしたもの(前述の通り例外もありますが)であり、ゴスペルはキリスト教全般を題材とした宗教歌である、といえます。

 音楽的にはゴスペルはジャズやリズム&ブルースの影響を受けて変化していき、エレキ編成のバンドで激しいリズムで歌われるようなスタイルができました。黒人霊歌が現代ゴスペルサウンドにアレンジされゴスペルナンバーとして歌われているので、この二つが混同されることが多いようです。

ブルースやリズム&ブルースとゴスペルは音楽的には、大きな差はありません。違うのは詞の内容です。ブルースが人間の苦悩や悲しみを人間に向けて歌うのに対し、ゴスペルは神に向けて苦悩を訴えたり、神への愛を歌うのです。