雪になるのかと危ぶまれた雨も小雨程度で上がり、2005年最初の『仲田修子&ミッドナイト・スペシャル』のライブです。1月29日、土曜日。
純情商店街を歩いて行くと、長く営業していた角のベーカリーのガラスに、長期休業の貼り紙がありました。『ペンギン・ハウス』へ行く時にはいつも、ライブ前のドキドキわくわくを抱えながら、この角を曲がっていました。ここの通りは昔ながらの商店街ですが、景色は変わりつつあります。少し寂しい思いでウィンドウを眺めてから、ペンギンへの階段を降りました。
体がアルコールで暖まった頃、ステージにメンバーが登場です。全員が黒の上下で決めていました。修子さんも、黒のカットソーに黒のスリムパンツ。華やかな花壇のような色合いのジャケットに、銀のリングのイヤリング。皆さんの衣裳は、実は合わせたわけでは無く、偶然だと聞いてびっくり。以前のリハーサルや選曲の段階で、全員の頭の中に今夜の統一イメージが完成していたのでしょうか。
おなじみの『マンデー・モンニーグ・ブルー』、今年最初の曲は二日酔いの曲でした。華やかなギターと、ラフなコーラスがかっこいい。
そして、いきなり鳥肌ものだった『ジョージア・オン・マイ・マインド』。ギタリストの見せ場・聞かせ場というこの曲、有海さんのギターが泣かす泣かす。魂を揺すぶられる音です。で、さて、このギターに、修子さんのボーカルはどう応えるのか。
修子さんの唄というのは、道を見せる。モーゼが開いた海の道のように。すうっと、白い一本の光のような道を示してみせる。火傷しそうなあのギターを受け止めて、正面から迎え撃つ覚悟と気合がある。
この『凄味』は、修子さん独特のものの気がします。穏やかな曲でも激しい曲でも、体や精神を削り取っているような印象を受けます。ステージで、言葉で語ることは無くても、生きざまの崇高さが伝わって来ます。
『ジャッカルとアラビア人』では、シンプルで語り過ぎない歌詞の中に、多くの絵を浮かび上がらせてくれました。くっきりとした月や荒涼とした風景。スライドショウのように挿入される歴史の風景。言葉を尽くさなくても、聞き手が『掻き立てられる』曲です。新曲『ウォーター・スネイク』も、寓話的で神秘的な歌詞で、力を貰える曲でした。
一部最後の『ミッドナイト・スペシャル』は、曲に入る時のかっこいいアカペラコーラス、今夜はキーボードのHARUHIさんの澄んだ女声が生きてました。前回の、男声を生かす荒くれっぽいのもよかったですが、今夜は女囚人もいたようです(笑)。
二部では、修子さんはアニマルプリントのベスト姿へお色直し。マイクを握っている時、『修子のタンゴ』で踊った時、左手のブレスレットがキラキラと綺麗でした。
二部の目玉は、ゲストのROKU岩切さんとのギターバトルです。渋いスタンダード、粋で乗りのいいスタンダード、行け行けのオリジナル、三連チャンのブルースざんまい。さらさらのロングヘアも美しいROKUさんの、クールで鋭利なギターは、ジャズトランペットが夜のアスファルトに響く時のようなサイバーさでした。『スィート・ホーム・シカゴ』では、ブルースハープの板谷さんもゲスト参入し、空気はもうひたすらブルース!ブルース!ブルース!客席もスタンディングです。
最後のアンコール『レコード』は、一枚のレコード、一つの曲に込められた想いをドラマチックに歌い上げた曲でした。切れるようなギターと、そのエッジを素手でがしりと受け止めるような修子さんのボーカルが圧巻でした。
風景は変わっても、この街には不動のものがある。私にも、自分の道が見えたようなライブでした。
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