また、桜の季節になりました。
3月26日、土曜日。
去年の丁度今頃、エレキ編成の仲田修子&ミッドナイト・スペシャルがライブ活動を再開し、満開の桜と宴会を尻目に、いそいそとライブに走った記憶があります。
あれから一年。
今年の桜の蕾はまだ硬いですが、バンドは順調にライブを重ね、今夜もペンギン・ハウスで楽しい夜が始まりました。
エメラルド・グリーンのチャイナ衿のブラウスに身を包んだ修子さんがゆっくり前へ進みます。ステージにはまだギターの有海さんが一人だけ。アコースティック・ギターから流れ出すイントロは『港の見える丘』でした。桜の出てくる春らしい歌からスタートです。ギターとボーカルだけのその曲は、修子さんの肩に桜の花びらが一枚二枚と舞い落ちてくるようで、ふわりと柔らかく美しかったです。竹の風鈴に似たアジアンテイストのイヤリングも、修子さんが動く度に揺れて綺麗でした。
2曲目からは、ドラムの瀬山さん、ベースの増吉さん、ピアノの実世子さんも加わります。修子さんのグリーンの衣裳を生かす為か、再び偶然なのか、皆さん全員が白を基調とした衣裳でした。ブルース有り、タンゴ有り、一曲ごとに深く豊かに楽しめるオリジナルが続いたところで、第一部のゲスト・ボーカリストの只埜すなさん登場です。迫力のある渋いブルースを聞かせてくれました。
二部のゲストは、ジーザス永山さん。いかにもブルースマンという長髪と髭の風貌。彼は高円寺ブルースシーンの有名人です。乗りのいいオリジナルを披露しました。
そして修子さんの新曲は『クィーン・オブ・ブルース』。「私がブルースの女王だ」と宣言する曲です。ブルースど真ん中という『超ブルース』でした。さらにゲストにROKU岩切さんのギター、板谷龍二郎さんのハープが加わります。
女王は、女王という地位で生まれても、生まれつき女王だったわけでなく、女王であるという誇りや意識によって女王として完成されていくのだと思います。修子さんは、常に誇り高く、強い美学を持って歌って来たシンガーという印象があります。『まあいいや』『こんなものか』という妥協の影が見えて来ません。
「高円寺北口、しかもこの店半径50メートル限定の女王です」と笑う修子さんですが、いい王国を作っていそうです。
そのあとは、一緒にコールし踊れる曲が続きました。このあたりは、ライブを重ねる度に、バンドと観客の呼吸や空気がどんどんテンションの高いものに変わって行きます。
観客も汗を拭き、息を整える中、アンコールの最後は『トラブル・イン・マインド』。鉄道自殺を遂げようと一度は線路に横たわった主人公が、『よい明日』を信じて立ち上がったのは、月のせいか風のせいか・・・。歌詞には理由は出て来ませんが、修子さんのボーカルは、絶望から希望に変わる時間の流れまで歌ってしまうようでした。修子さんの歌詞は、決して語り過ぎることはありません。そして、修子さんの歌は、言葉の無い事までも歌い上げて行きます。
今夜は、これで終わりではありませんでした。なんと、第三部が存在しました。修子さんは出演しませんが、バンドメンバーやゲスト(本編では出演しなかった中尾KENさんも登場)による、女王様への奉納ライブセッション(修子さん談)です。
増吉さんと実世子さんのユニット・HARUHIによるオリジナルに始まり、女王に仕えるブルース野郎共が、スタンダード曲の得意フレーズを捧げました。皆さん、濃いブルースメンです。ソロ回しもこってりで、散々みんなおいしいコトをやり、修子さんも満腹の拍手で応えていたようでした。私達観客も、もちろん楽しませてもらいました。
店を出て、半径50メートルを過ぎても、私の想いは変わりません。仲田修子は『クィーン・オブ・ブルース』です。
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