仲田修子&
MIDNIGHT SPECIAL

LIVE REPORT 008
at KOUENJI PENGUIN HOUSE, 28,May,2005
文:福娘 紅子


 一回のライブで、こんなに色々な世界を聞かせて貰えるなんて、もったいないようなありがたいような。

 木々の緑から初夏の匂いが漂う5月28日、半袖の肘が心地よい風を感じる夕方です。今夜は仲田修子&ミッドナイト・スペシャルのライブ。

 修子さんは、エスニックな素朴な作りの、スモックに似たブラウス姿で登場しました。ボトムはジーンズ、素足にはラメグレープのペディキュア。首には、勾玉の翡翠のペンダントが揺れていました。今夜の装いはカジュアルな雰囲気で、観客に居心地の良さを意識させます。

 『いきなり降り出した雨の中で』は、トップに演奏されることが多い曲です。静かに始まり、そして次第に深く気持ちを潜らせるこの曲は、実は聞き手にとってとても親切です。今まで酒と雑談に興じていた客は、いきなりの暗転とスポットライトに、『世界』へ入り込むのが遅れる場合がありますが、ミッドナイトのライブ構成はいつも緻密で知的です。

 一部は、通常の一晩のライブを凝縮させたような内容でした。赤いアロハが似合うギタリスト・有海さんとのデュエットの後、もうハープの板谷さんが参加して乗りのよいブルース、そして『東京行進曲』含めた華やかなメドレー。こんなに一部の最後で盛り上げてしまって、二部はどうするのだろう?

 今夜ほど、このバンドの構成の巧さにうなった夜はありません。

 ギターと修子さんの歌だけで演奏された昭和前期の匂いのする『ネオンの街』は、ドラムの瀬山さんのオリジナル曲。そして、圧巻だったパーカッション&ドラムとボーカルだけの『サマータイム』。最初、ステージにバケツは持ち込まれるわ、瀬山さんが素足に鈴を装着するわで、
「何が始まるの?」と興味津々。お客も、思わず身を乗り出します。そんな覗き見好奇心を粉砕する、荘厳で、緊張感に溢れた『サマータイム』でした。巫女という言葉さえ連想させる仲田修子の凄まじいボーカル、研ぎ澄まされた太鼓のリズム。原曲のアンニュイさを吹き飛ばすサイコで力強い演奏です。水中で放たれた銅鑼の音は、観客の皮膚を震わせました。
 この曲は、ライブメニューでも演奏箇所が特定されるでしょう。一部のあの構成が、『サマータイム』を効果的に聞かせました。

 二部後半は、乗りが良くて体が揺れるというだけでなく、含みのある語りすぎない曲が続きました。

「あたし達、ただ客を踊らせるだけのバンドとは、わけが違う」

修子さんのボーカルがそう語っているように聞こえました。『サマータイム』を聞いた後では、余計にそう感じさせます。


今夜はベースの増吉さんの聞かせ処も増えました。やはり腹に音が響くと、燃えます。

 ラストの曲、『ミッドナイト・スペシャル』の囚人野郎コーラスも、女囚(笑)実世子ちゃんの女声が効いています。彼女、小柄で清楚な佇まいとは裏腹に、ピアノの音もかなりブルージィーで不良の香りがかっこいい。

 アンコールでは、有海さんがピアノの前に座り、ギター無しのバンド演奏での『アメージング・グレイス』。メロのフレーズをベースが奏でるアレンジも心に滲みます。

 そして、アンコールの最後の最後。古いファンで、修子さんのヘアを担当するヘアメイクアーチストのKさんへの『ハッピーバースデイ』のプレゼントが有り、心暖まるシーンでステージは幕を閉じました。

 定期的に精力的にライブを続けるミッドナイト・スペシャルですが、常に新鮮で、意図や意志のあるステージを見せてくれます。精神性の高い良い音楽で満腹な、幸福感に満ちた夜でした。

 ライブレポート
 「MIDNIGHT SPECIAL」
  文:福娘紅子
  構成:ロウソサエティ企画室
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