7月最後の土曜日。電車の中は浴衣姿のカップルが目立ちました。今夜は隅田川の花火大会があるのですね。
夏の食事には、素麺冷中華で涼しくという流れと、ラーメンやカレーで汗をかこうという流れがありますが、ブルースは後者の音楽という気がします。さて、今夜は花火よりブルースです。仲田修子&ミッドナイト・スペシャルのライブ。
先日の火事で一部改装したというペンギンハウスですが、ステージも客席も変わりなく、旧知の友の無事を確認できてほっとした想いで席に付きました。天井の大きな扇風機も今まで通りに回り続けます。
今夜の修子さんは、民族調のパープル系のブラウスに、キラキラとストーンが光るジーンズというスタイルです。アクセサリーも、シンプルなペンダントとブレスレットで、素朴で涼しげな印象。
スタートは『わたしの名前は』という軽いブルースです。肌触りのいい天然素材の服を着ているような気分にさせる曲です。タイトル通り自己紹介の曲なのですが、簡単な単語ばかりなのに含みのある歌詞で、その深さや重さに世界に引き込まれていきます。
実は、私が修子さんの歌を初めて聞いたのはこの曲でした。肩の力が抜けたかっこよさに一目惚れでした。すごいことを鳴り物入りでやるより、さらりと歌う方が数倍も粋だということを知りました。
『Me & Bobby McGee』『Georgia on My
Mind』と、聞かせるスタンダードが続き、今夜のゲストは初代メンバーのジミー矢島さん。巨躯のジミーさんがアコースティック・ギターを抱えて登場すると、ステージの天井が急に低くなるような。
ジミーさんは二部でもブルースメドレーで参加、そして三部の打ち上げライブでもクレージィーなオリジナルを披露して大喝采でした。三部の曲は修子さんが「カヴァーしたい」と許可を求め、OKを得たそうなので、次回ライブではこの"ヤバいほどカッコイイ"曲が修子さんのボーカルで聞けるかもしれません。
ライブでの演奏を重ねフィットしてきたという新しい曲たちを経て、一部最後は懐かしい『狼たちの子守唄』。「ああ、この曲もあった!」と感激でした。この曲は往年のファンにとても人気がありましたが、新生ミッドナイトでは初めての演奏でした。まだまだ引出しには色々と隠していそうです。
二部の中盤では、ゲストを交えたブルースメドレー。ハープの板谷龍二郎さん、エレキ・ギターのROKU岩切さん、そしてジミーさんという豪華さです。
まずはオリジナルの『Going to Chicago』。「死んでしまおか、シカゴへ行こか」という、都々逸のような鯔背(いなせ)なフレーズで始まる曲です。語り過ぎないで、でも皆にきちんと伝わるように語るというのは、寸止めの選択が難しいと思うのですが、修子さんの言葉はいつも強い力を持っています。シンプルな言葉に想いや景色が重なって見えて来るので、過剰に説明したり多くの形容詞で飾ったりする必要がないのでしょう。
その後は乗りのいいブルースで客席も揺れ、ラストはバンド名由来の曲。荒くれ野郎どもという感じのコーラスも決まって、すっかりコーラス・バージョンも定着です。修子さんのソリッドな語りの入る旧バージョンも鳥肌ものだけれど、アカペラ・コーラスの方はいきなり感情が爆発する高揚感があります。
ピアノでのしっとりしたアンコールの後は、バンドやゲストやお客さんのミュージシャンの皆さんが次々に登場、オマケとは言えないほど素敵な演奏を聞かせてくれました。
穴蔵のライブハウスに花火は上がらないけれど、『やっぱ夏はブルースでしょう』という夜でした。楽しかった〜。
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