昼間はTシャツの袖を捲くり、肩を出して歩くような暑い日でも、夜になると少し肌寒く感じるようになりました。逝く夏を惜しむ9月14日、仲田修子&ミッドナイト・スペシャルのライブです。
時間になり、ステージに登場したバンドのメンバーの衣裳は何気にジャパニーズ・テイスト。ギターの有海さんのTシャツは花札がモチーフ。ピアノの実世子さんの首にはタオルで無く粋なてぬぐいが。
修子さんも和風の小花が散った綿シャツにジーンズというラフな衣裳です。1曲目、軽いギターからふわりと始まった『サンフランシスコ・ベイブルース』は、肩の凝らない簡単な言葉で綴られたラブソングです。でも修子さんの歌は、その素朴な歌詞だからこそ、主人公女性の可愛い愚かさや一途さが伝わって来て、ほろりとさせられます。歌詞では一言も触れていないのに、この女性がどんな生まれでどんな仕事でどんなファッションでというのが、修子さんのボーカルで目の前に浮かんで来るのも凄いことです。
3曲目の『Hey!兄ちゃん』は、ファンキーなリズムとヤバイ歌詞炸裂の、体が揺れるナンバーです。リズムの強い曲は、ドラムの瀬山さんとベースの増吉さんの見せ場聴かせ場という感じで、アルコールが全身に回ったようにかぁっと熱くなる一曲でした。前回のライブで「カヴァーします」と予告したジミー矢島さんのオリジナルですね。
一部最後の「ココニイルヨ」もアシッド乗りの曲で、客席も既に汗をかきました。
今夜は平日のライブということで、スタート時にはお客さんも決して多くなく、MCで修子さんも心配していましたが、時間がたつにつれて仕事を終えたファンの皆さんが次々と到着し、客席はいつもの顔で埋まって行きました。『スィート・ホーム・シカゴ』の「カモン!」のレスポンスも、大勢の声が混じり合いイイ感じです。
それに、今夜はバンドの音のバランスが今までで一番いい気がしました。隣の席の知人にそれを告げると、「あれだよ、あれ」と頭上のスピーカーを指さしました。新規導入の最新兵器らしいです。でも、それだけでなく、隔月というペースで精力的にライブを続けて来た結果のように思います。新規加入のメンバーも復活組も。音が同じカラーで統一され、混じり合い、美しい色合いを出しているように見えました。「ああ、"バンド"だぁ。すっごく"バンド"だ」と嬉しくなりました。
アンコール1曲目は「ホーボーズ・ララバイ」。
修子さんは高円寺という街の象徴で、女神であり、この街に根を降ろしているわけですが、でもどこかホーボーに似た生き方も感じられます。旅から旅へ。何かを求めて、どこかへ向かっている。背に孤独という鞄を抱え、確固たる自分の足を信じて前へ進む。明日なんてわからないという生き方はブルースそのものです。
最後の曲「マザーレス・チャイルド」は凛としたアカペラ。客席は快い緊張に息を飲みます。ヒリヒリと喉が痛いような切なさです。
ボーカルがフェイドアウトし、観客は声の無いため息を吐き、そして賞賛の沈黙の後には手が痛くなるほどの拍手です。
私は拍手を終えた手で、早速ビールを飲み干します。今夜もいいお酒が飲めるライブでした。修子さん、バンドの皆様、お疲れさまでした。
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