肩の凝らない空間で、気楽なお酒を飲みながら音楽を楽しむ。そんな普段着感覚のライブは、実は贅沢なものだと思う。
背筋を正して息を詰めて聞きほれる緊張感も楽しいが、それは、そうハイ
レベルでないアーチストにも稀に出来る技だ。観客をリラックスさせる方が技としては高度だろう。
9月29日ペンギンハウスでの仲田修子&ミッドナイト・スペシャルのライブは、いつもの感じで、でも新鮮だった。
メンバーそれぞれの写真は、位置についてライブが始まる直前や、ボーカルが入る直前の表情を写したものだ。皆さん、ほどよい緊張感と高揚感と、そして柔らかさも宿すいい顔をしてらっしゃると思う。
今回はゲストやイベント性などの仕掛けは無く、スタンダードにミッドナイトの歌と演奏を楽しませてくれる内容だった。そして、そういう「普通」が、一番難しいのじゃないだろうか。
もちろん見どころというか「聞きどころ」は多かった。まず、一部ステージでの和テイストの楽曲。バックはギターとパーカッションだけという三人編成で聞かせた、『鳥追』『お夏』は圧巻だった。
小唄・端唄・都々逸などの邦楽の詳しい違いや定義は知らないが、そういう粋や哀愁を持った修子氏らしい曲だ。この曲たちは発声もメロデイラインも小唄などを意識し
ていると思う。ソングライターとしてもボーカリストとしても、修子氏の引出しの豊富さには驚く。ギターが三味線に、ジャンベが鼓に見えて来るような和風の曲だが、それでいてブルースな匂いも残している。
『お夏』ではたぶん観客みんなが、同じ風景を共有したと思う。一面の菜の花のその景色は、いにしえなのか近未来なのか幻惑させるような美しさだった。
一部では、今回正式に「準構成員」となったハープの板谷氏の紹介も有った。不良なバンド?に入ったせいか、板谷氏も不良度30%アップでサングラス着用。ライブを重ねてどんどん本物の不良?になっていく期待大だった。
二部は、「大人の事情」で、乗れる曲と静かな曲を交互に演奏して楽しませてくれた。
「バンドもお客さんも年代が上なので、体力の関係上」とおっしゃっていたが、その振幅がそのまま感情の振幅になり、心の右端から左端まで全部使って楽しんだという感じだった。実は計算された構成なのだろう。
とは言ってもラスト3曲とアンコールの1曲目はダンサブルな曲が続き、「ダンサーズ」(踊りたい観客の皆さんを修子氏がこう命名)も汗を飛ばし、床も揺れる盛り上がりだった。若いお客もそうでないお客(私か?)も立って踊って腕を振り上げ、椅子の上で体を揺らすお客も一緒に声を張り上げる。熱い空間はさらに熱く盛り上がった。
アンコールの最後の曲、『チャイナタウンでグッバイ』では、有海氏のギター一本でしっとりと聞かせた。どことも知れぬ異国の、いつの時代とも思える不思議な空気。どこか遠くへ連れて行かれる浮遊感。また違う風景を私達に見せてくれた。
今夜もこのバンドは、「恰好がいいとはこういうことさ」というライブを見せつけた。特に何かを声高に叫ぶこともなく。
いつものように。
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