いつもの店で、いつものビールorバーボン。そしていつもの、ごきげんなバンド。
♪あの角曲がれば すぐ見える♪、ライブ一曲目の『ペンギンハウス』の歌い出しに似て、常に隣に心地よいものがある幸福。金持ちでなくても、名声が無くても。失業しようが、失恋しようが。<角を曲がれば>そこに有る、みんなの大好きなもの。
11月28日。高円寺ペンギンハウスでの仲田修子&ミッドナイト・スペシャルのライブは、この夜で暫く(4月迄)お休みとなるそうだ。
寂しいという言葉では足りない、体の骨の一本が無くなるような不安さえ感じる。でも休養予定の数カ月を埋めてくれるような、熱くて感動的なライブだった。
さり気なく始まる有海氏のアコースティックな響きと修子さんの肩の力が抜けたボーカル、二人の演奏からライブはスタートする。マスターのシェイカーの音もプラスされて、アンコールで演奏されることが多い曲だったが、夜の始まりに聞くのも気持ちがよい。そして2曲目のフォルクローレ・テイストの『ラ・コンドル』からドラム・パーカッションの瀬山氏が加わった。
「これからどんどん人数が増えて行きます」3曲目『ミー&ボビーマギー』からはベースの増吉氏とキーボードのHARUHIさんも加わり、乾いた修子さんの語りは湿気の無い潤いを与える。
仲田修子のボーカルは客を涙ぐませることも多いが、決して湿気は多くない。泣かそうとはしていない。淡々と言葉を紡ぐ。研ぎ澄まされた端的な歌詞の中に、人の心を潤す優しさや痛みが散りばめられている。
一部のステージは、前回ライブからの準構成員・ハープの板谷龍二郎『ロン』氏も参加して、ジミー矢島氏と友達になるきっかけになった『回転ドア』をカヴァーしたり、ブギ、タンゴの踊れる曲や、人気曲『狼の子守唄』などの、賑やかで楽しい構成だった。
二部も、『高円寺オン・マイ・マインド』『スィート・チャリオット』という、軽く乗れる曲から始まり、有海氏の泣きのエレキが冴える『本牧ジャンキー・ホンキー・ブルース』、コーラスではメンバーの荒くれ者っぷりもすっかり板についた『ミッドナイト・スペシャル』と続き、ロン氏も入ってのブルース大会へ突入。痺れる渋い曲と乗りのいい曲の両方を楽しませてくれて、ラストは、愛すべき嫌われ者『シンデレラのお姉さん』でみんなが腕を振り上げた。
アンコールは、老いも若きも行きたい『国立第七養老院』で客席もコールの嵐、そして『チャイナタウンでグッバイ』でグッバイ。客席は息を止めてこの幻想的な曲の世界を堪能し、曲が終わるとみんながふうっと長い息をついた。
その溜息の後、拍手は鳴りやまなかった。ライブ休養の枯渇感が、「もっと聞きたい」とみんなの掌を叩かせる。修子氏は「もうビールが飲みたいんだけど」と苦笑しつつ、予定になかった『ローズ』を歌ってくれた。
春になれば、一粒の薔薇の種が芽を出すように、仲田修子もここへ戻って来てくれることだろう。それを心の頼りに、私達ファンは寒い冬を越そう。
アスファルトの上に雪が積もっても、四月にはまたこのバンドが聞ける。
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